2016年9月14日水曜日

【声明】ノーモア・ヒバクシャ訴訟・名古屋地裁判決について(2016年9月14日)



2016年9月14日
厚生労働大臣  塩崎 恭久 殿

ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団
ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団連絡会
日本原水爆被害者団体協議会

声 明
ノーモア・ヒバクシャ訴訟名古屋地裁判決について

1 本日、名古屋地方裁判所民事第9部(市原義孝裁判長・髙瀬保守裁判官・西脇真由子裁判官)は、4名の原告のうち2名について、国の却下処分を違法として取り消す勝訴判決を言い渡した。

2 判決は、放射線起因性の判断について、DS02の推定被曝線量は「あくまでも一応の目安」にとどめるのが相当であり、「当該被爆者の被爆後の状況、被爆後の行動、被爆後に生じた症状等に照らし、様々な形態での外部被曝及び内部被曝の可能性がないかどうかを十分に検討したうえで」「健康に影響を及ぼすような相当量の被曝をしたのか否かについて判断」する必要があると判示し、4名全員の放射線起因性を認めた。

3 また、2013年12月16日に再改定された「新しい審査の方針」についても、判決は、原爆放射線による被曝を検討するに当たっては、残留放射線の影響や放射線感受性の個人差を考慮する必要があることを指摘し、上記基準の積極認定に該当しない場合でも、個々の被爆者の被爆状況等や被爆後の健康状況などの事情を個別具体的に検討するのが相当であるとして、これに反する国の主張を退けた。

4 さらに、判決は、原告らの疾病と原爆放射線との関連をいずれも認めた。
特に、当日2キロに入市した慢性甲状腺炎の原告と、直爆2.3キロの心筋梗塞の原告は、上記再改定された「新しい審査の方針」の積極認定に関する疾病、被爆距離ないし入市時間の基準に該当しないものであるが、判決は、これらの疾病についても、一般的に放射線被曝との関連性が認められ、「低線量域についてもその関連性を否定することはできない」として、「確立した知見がない」とする国の主張を退けたことに大きな意義がある。

5 ただし、今回の判決が、これまでの多数の判決の流れに反して要医療性を狭く解し、また、国家賠償請求を退けたことは不当である。

6 厚労省は、全国の被爆者が原爆症認定集団訴訟に立ち上がる中で、2008年に「新しい審査の方針」を策定して積極認定の制度を導入し、国は2009年8月6日に日本被団協代表との間で「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」を締結した。この確認書には「訴訟の場で争う必要のないように、定期協議の場を通じて解決を図る」と明記されている。それにもかかわらず、厚労省は、みずから策定した「新しい審査の方針」の運用を狭め、原爆症認定行政を後退させたため、被爆者はノーモア・ヒバクシャ訴訟を全国の裁判所に提訴せざるを得ない状況となった。

7 原爆症認定集団訴訟以来の司法判断の流れに沿う今回の判決に対して、国は控訴を断念し、重い病気で苦しんでいる原告らに対する早期救済をはかり、原爆被害に対する償いをはかるべきである。
  


被爆71年に当たる今年5月、原爆投下国であるアメリカのオバマ大統領が広島を訪問し、「いつか証言する被爆者の声が聞けなくなる日が来るでしょう。しかし、1945年8月6日の朝の記憶は薄れさせてはなりません」と述べた。原爆症認定問題の最終的な解決をはかるべき時は今をおいてない。国は、これまでの認定行政を断罪した累次の司法判断を厳粛に受け止め、日本被団協の提言に沿って司法と行政の乖離を解消する、法改正による認定制度の抜本的な改善を行い、一日も早く、高齢の被爆者を裁判から解放すべきである。
  

私たちは、国が、17万余の被爆者が生きているうちに、原爆被害に対する償いを果たすことこそが、核兵器をなくすという人類のとるべき道の歩みを進めることになると信ずる。





2016年9月14日
厚生労働大臣  塩崎 恭久 殿

ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団
ノーモア・ヒバクシャ訴訟愛知原告団
ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団連絡会
ノーモア・ヒバクシャ訴訟愛知弁護団
愛知県原水爆被災者の会


声 明
ノーモア・ヒバクシャ訴訟名古屋地裁判決について
1 本日、名古屋地方裁判所民事第9部(市原義孝裁判長)において、2名の原告について、国の却下処分を違法として取り消す原告勝訴の判決が言い渡された。
2 裁判所は、原告全員について(うち3名の原告は非がん疾患を申請疾病とするものである)、放射線起因性があるものと判示した。
しかしながら、2名の原告については、再発の可能性が低いこと等を理由に、要医療性が認められないと判断をした。
また、原告らの国家賠償請求についてはいずれも棄却をした。
3 本判決は、原告らの放射線起因性を認め、起因性はないとした国側の主張を明確に排斥した点で評価できる。裁判所は「個々の被爆者が積極認定の範囲に該当しない場合であっても、個々の被爆者の被爆状況等や被爆後の健康状況、被爆者の罹患した疾病等の性質、他原因の有無等を個別具体的に検討し、放射線起因性を判断するのが相当である」と判示しており、概ね、原爆症認定集団訴訟における司法判断を踏襲している。
しかしながら、要医療性については、「再発や悪化の危険性が高い等の特段の事情がない限り、定期検査などは医療にあたらない」と判示した。要医療性の範囲をきわめて狭く限定するものであり、被爆者救済という被爆者援護法の趣旨に反する不当な判断である。
4 厚労省は新しい審査の方針を策定し、また国は2009年8月6日に「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」を締結した。そして上記の確認書には「訴訟の場で争う必要のないように、定期協議の場を通じて解決を図る」と明記されている。それにもかかわらず厚労省は、みずから策定した「新しい審査の方針」の運用を狭め、原爆症認定行政を後退させたため、被爆者はノーモア・ヒバクシャ訴訟を全国の裁判所に提訴せざるを得ない状況となっている。
 今回の名古屋地裁判決は、敗訴原告を含めて放射線起因性を肯定しており、放射線起因性に関する国の後退する原爆症認定行政に対して、厳しい批判を加えたものであり、司法と行政の乖離がいまだ埋められていないことを示す内容となっている。
5 今回の名古屋地裁判決に対して、国は勝訴原告に対する控訴を断念し、病気で苦しんでいる高齢の原告らに対する早期救済をはかり、原爆被害に対する償いをはかるべきである。
国は、これまでの認定行政を断罪した累次の司法判断を厳粛に受け止め、日本被団協の提言に沿って司法と行政の乖離を解消する、法改正による認定制度の抜本的な改善を行い、一日も早く、高齢の被爆者を裁判から解放すべきである。