2018年3月8日木曜日

ノーモアヒバクシャ訴訟名古屋高裁判決についての声明






2018年3月7日
ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団
    ノーモア・ヒバクシャ訴訟弁護団連絡会
  原爆症認定訴訟愛知弁護団
         日本原水爆被害者団体協議会
愛知県原水爆被災者の会(愛友会)
被爆者支援ネットワークあいち



1 本日、名古屋高等裁判所民事第4部(藤山雅行裁判長)は、長崎の原爆被爆者2名が、厚生労働大臣の原爆症認定申請却下処分の取消を求めた控訴審において、控訴人を敗訴させた原判決(名古屋地方裁判所平成28年9月14日判決)を取り消し、控訴人2名を原爆症と認める逆転勝訴判決を下した。

2 本件では、原判決は、控訴人の申請疾病について、いずれも放射線起因性を認めながら、原爆症認定のもう一つの要件である要医療性について「被爆者が積極的な行為を伴わない定期検査等の経過観察が必要な状態にあるような場合には,同法上,原則として健康管理としての検査等によって対応すべきであって,当該疾病等につき再発や悪化の可能性が高い等の特段の事情がない限り,上記定期検査等は「医療」には当たらない」として要医療性を否定した。
名古屋高裁判決は、要医療性について「(被爆者援護法10)条の「医療」は、積極的な治療を伴うか否かを問うべきではなく、被爆者が経過観察のために通院している場合であっても、認定に係る負傷又は疾病が「現に医療を要する状態にある」と認めるのが相当である」として、一審判決を是正する判断を行った。
これは、被爆者を救済するという被爆者援護法の趣旨に合致した解釈であり、要医療性を狭くとらえている国の運用を厳しく批判したものである。

 国は、上告受理を申し立てることなく本判決を確定させ、控訴人らを早期に原爆症と認定するとともに、要医療性に関する自らの運用を本判決の趣旨に基づいて全面的に改めるべきである。

3 原爆症認定集団訴訟、ノーモアヒバクシャ訴訟を通じて、全国の被爆者は、原爆による放射線被曝の影響が、被爆から70年以上たった現在も、被爆者の体を蝕み続けている実態を明らかにしてきた。
このような、被爆者が命をかけて訴え続けてきた核兵器の残虐性、非人道性が、国際世論を動かし、核兵器禁止条約の成立という画期的な成果につながっている。

 国は、「唯一の被爆国」の政府として、今もなお原爆の被害に苦しみ続けている被爆者が訴訟に訴えねばならない状況をなくすために原爆症認定制度を抜本的に改めるとともに、核をめぐり緊迫する国際情勢を転換するためにも、核兵器禁止条約に参加する態度を表明し、核兵器廃絶の先頭に立つべきである。