毎日新聞
アンケートは、当時15~19歳の陸軍船舶特別幹部候補生だった142人を対象に昨年2月に実施。候補生は原爆が落とされた1945年8月6日、広島市外で集められ、正午~午後5時ごろに救護のため市内に入った。
作業の場所や内容、粉じんを浴びた状況、その後の健康状態などを尋ねて64人から回答を得た。
脱毛や下痢などの急性症状の頻度は、爆心地から半径2キロ以内で作業して粉じんを浴びたグループ(21人)が、2キロ以遠で浴びなかったグループ(22人、不明も含む)の11.7倍に上り、2キロ以遠で浴びた人(9人)も5.5倍と高かった。
後にがんや白血病になった事例も、浴びたグループの方が多かった。
大瀧名誉教授は「サンプル数は少ないが、年齢や健康状態、活動時間がほぼ同じでデータの信頼性は高い」としている。
また、放影研が2001年に公表した被爆者3042人の染色体異常の発生頻度と推定放射線量の関係を示すデータも再検討した結果、屋内で被爆した人の放射線量が実際は約30%多い可能性があることが判明。
大瀧名誉教授らは「後に倒壊建物の粉じんなどを吸って内部被ばくし、染色体異常につながった可能性が高い」と結論づけた。
放影研は残留放射線や内部被ばくについて「原爆さく裂時に放出された初期放射線に比べてかなり小さい値で、健康リスクに大きく影響しない」とし、初期放射線のみを算定する被ばく線量推定方式を作成。国はこれを原爆症認定に用いてきた。
一方で、認定訴訟では原告の体験や症状の検討から内部被ばくの過小評価を指摘する司法判断が相次いでいた。
大瀧教授は「援護されるべき被爆者らが見捨てられてきた恐れがある。方式を見直すべきだ」としている。