2015年5月20日水曜日

被爆し白内障、2人を原爆症と認定 広島地裁




朝日新聞  2015年5月20日



広島の原爆で被爆した影響で白内障になったのに、原爆症と認めないのは不当だとして、被爆者4人が国に認定申請の却下処分取り消しなどを求めた訴訟の判決が20日、広島地裁であった。梅本圭一郎裁判長(小西洋裁判長代読)は4人のうち2人を原爆症と認め、却下処分を取り消した。1人あたり300万円の国家賠償請求は退けた。


国は「救済範囲を広げる」として2013年12月に認定の新基準を設けた。新基準で認定されなかった被爆者を原爆症と認めた判決は5例目で、白内障の症状は初めて。認定行政の見直しを求める声がさらに高まりそうだ。
4人は広島県内に住む70~84歳の男女。白内障を患い、07~08年に認定申請をしたが却下され、11年に提訴。国は新基準に照らし、4人については改めて認定しないと判断していた。
原爆症と認定された原告2人のうち1人は、爆心地から約2・4キロで被爆し、新基準で積極認定する「爆心地から約1・5キロ以内で被爆」の対象外だったが、広島地裁の判決は放射能を含む「黒い雨」を浴びるなど「相当程度、被爆した」とし、被爆と白内障の関連性を認めた。医療の必要性もあるとした。もう1人は積極認定の対象となる「爆心地から約1・5キロ」で被爆。判決は「点眼薬の効果を見ながら手術の時期を判断していた」として医療の必要性を認めた。
白内障は他の病気と比べて原爆の影響か加齢による発症かを判断するのが難しいとされる。厚生労働省によると昨年、新基準の下で審査された申請1744件は1153件(66%)が原爆症と認定されたが、白内障の認定は11件にとどまり、114件が却下。旧基準だった13年も認定は4件で、46件が却下された。
原爆症をめぐっては03年以降、認定を求める被爆者の集団訴訟で国の敗訴が相次いだ。新基準になってからも、がんや心筋梗塞(こうそく)、甲状腺機能低下症などの被爆者について、国敗訴の判決が大阪、熊本地裁で4件出ている。「ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団」によると、今回の原告を含め約90人が5地裁・2高裁で却下処分の取り消しを求めてなお争っている。
(根津弥)